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【書評】小さな出版社のつくり方 ギョウカイを変えたいなら、読むべし。

【書評】小さな出版社のつくり方 ギョウカイを変えたいなら、読むべし。

こんにちは!おてライターのHIDEさんです。
今日は本のご紹介です!

今回ご紹介するのはこちら!

この本には12の新しい小さな出版社と、当事者のインタビューが出てくる。

主に独立していく場面や業界のシステムに関しての話が登場するが、ぼくは途中で本の中に「業界の裏側、出版社独立・創業のリアル」とメモしていた。
そう、この本。なんだか、とっても生々しいのだ。

例えば、新しい出版社が取引をしようと大手取次に出向いたとき、○○という会社に冷たくあしらわれたというようなことが出てくる。
ドラマじゃなくて、ほんとにこんな世界があるんだなというのが、正直な感想だ。
そんな描写から抱いた感想は「出版業会ってややこしいな」ということだ。

ややこしいと感じた一番の理由に、「取次システム」というものがある。
どういうものなのかということは、本書の言葉を借りるとしよう。

出版社は本を作ったら、取次を介して全国の書店に配本する。配本すれば、とりあえずはお金が入ってくる。しかし書店は売れないと見切った本を返品する。返品があると出版社は書店に返金しなければならない。返金をさけるために、出版社は次の本をつくる。つまり本づくりが資金繰りの道具になってしまった。こうして市場は縮小しているのに発行点数は増えるという奇妙な状態が続いた。

…とある。

前々から本には返品があるとは聞いていたが、取次が勝手に配本する「見計らい配本」というものもあるらしく、とにかく、独特のシステムなのだ。
恐らくは書店が在庫を抱えなくて済むようなシステムだったのだろうが、上手く機能していないように思う。なぜなら、この書店や業界を守るために作られたであろうシステム自体が業界自体を縮小させ、新規参入やチャレンジを認めないような業界にさせてしまっているからだ。

素人考えには、返品などなくして、出版社から仕入れて、売る。あまった分は書店負担というシンプルな構造でいいのでは?と思うのだが、今となっては、がらっと変えていくのはどうも難しいらしい。

その中で、コルクという作家エージェント会社の章で出てきた言葉が刺さった。

本を世に送り出すためにつくった出版社が、いつのまにか出版社を存続させるために本を作るようになる。

書店も取次も同様。存続することが自己目的化して、手段と目的が逆立ちしてしまう。「本が売れない」という状況は、その帰結だ。

p133

とある。

この部分を読んで、すぐさま、お寺の業界を思い浮かべた。

この部分をお寺ver.に言い換えるなら、『仏教を広めるため、仏教を聞くために作られたお寺が、いつのまにかお寺を存続させるために…』と、そんな感じになるのではないだろうか?

もちろん、お寺の維持は大事だけれども本来的な目的や役割を忘れてしまっては存在意義がなくなってしまう。自分自身もドキッとした。

一方、出版界ではいい動きも出て来ているらしい。
トランスビューという出版社が「注文出荷制」というものを始め、大手取次を介さず、書店と直取引をしているのだ。
それに賛同する出版社が2016年8月時点で、35社。同じシステムを取り入れているとのこと。
本書の頻出会社名になっている。

このトランスビューなる会社を創業した2人は、元「法蔵館」の同僚だったそうだ。
法蔵館と言えば、ぼくらにはおなじみの出版社で東本願寺との縁が強い。
どちらかというと、お堅いイメージがあるのだが、そこの出身者が革新的なシステムを始めたのはとても興味深い。

ここまで書いて、この本の見どころを要約すると、旧態然とする業界に対してのアンチテーゼだと言えるし、しっかりと未来を見据えて行動している人たちのドキュメントとも言える。

だから、この本は本に興味のある人だけでなく、所属する業界にもやもやを抱えたすべての人おすすめできる。

著者は出版業会はこれからもおそらく苦しい状態であるだろうと言っている。それと同時に、その中でもあえて出版社を立ち上げ、挑戦していく彼らはすばらしいと書いている。お金だけではない、なにかを見つけているから、挑戦していけるのだろうと。

もちろん、お金も大事だし、家族を養うためにそれなりに必要だけれど、熱い情熱や、どうして始めたのか?という原初的な思い。それこそが、これからの時代を突破する鍵になってくるのは間違いない。

そして、最後の章、「新しい小さな出版社をつくるということ」もぜひ読んでほしいと思う。ここにもヒントが詰まっている。

ぜひ、出版社を作りたいと思っている人にも、そうでない何かを変えたいと思っている人にもおすすめだ。

僧侶&ローカルWebメディア「ぶぜんらいふ。」編集長(http://buzen-life.com/) お寺と地域の活性を目指して日々奮闘中です。夢は豊前を仏教王国にすること。そのために、お寺を中心としたコミュニティ「お寺まちづくり」を推進中です!

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