日本人であればお釈迦様(おしゃかさま)という名前は聞いたことがあると思います。
教科書では仏教を開かれた釈尊と習いますし、はなまつりという行事に参加したことがある方もいらっしゃるかもしれません。
はたしてこのお釈迦さま。
いったいどんな生涯を送られたのでしょうか?
まずは誕生編です。
それでは、見ていきましょう。
お釈迦様の略歴とは?
まずはお釈迦様の概略です。
おおまかではありますが、次のようになります。
- 約2500年前の4月8日生まれ
- インドの北(現在のネパール)、ルンビニーの花園で誕生
- その後、35歳の時にさとりを開かれて仏陀となる。
- 仏法を人々に説かれる
- 80歳、2月15日にクシナガラで入滅
お釈迦様は伝説上の人物と思っておられる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は実在した歴史上の人物になります。
お釈迦様の生存年代とは?
お釈迦様の生存年代には諸説ありますが、紀元前463年~383年の説が主流です。(中村元 説)
お釈迦様の父母とは?どういう人だった?
お釈迦様ご自身のことを解説する前に、お釈迦様の父母はどういった方だったかということを説明しておきます。
まずお釈迦様の一族についてですが、インドの北方(現在のネパールとの国境付近)に釈迦族(シャカ族、パーリ語でサーキャ族)と呼ばれる種族が、
カピラ城(カピラヴァストゥという町)を中心に、小さな国を作っていました。
このカピラ城がお釈迦様のふるさとになります。
このカピラ城主スッドーダナ王(浄飯王・じょうぼんおう)がお釈迦さまのお父さんで、 お母さんはスッドーダナ王のお妃さまであるマーヤー夫人(摩耶夫人・まやぶにん)です。
この2人の子がお釈迦様となるので、お釈迦様は王子さまだったわけです。
ご懐妊と生まれた時の様子とは?
マーヤー夫人のご懐妊
マーヤー夫人がお釈迦様を授かった時の話です。
マーヤー夫人は、白い象が胎内に入った夢を見た後、釈尊を懐妊した(兜率天という天上の領域から白象の形をとって降りてきた)という伝説があります。
このためお釈迦様の誕生をお祝いするはなまつりの時に白い象を飾ったり、パレードでひっぱったりします。
白い象は全国の仏教保育園・幼稚園では定番ではないでしょうか?
生まれた時の様子
マーヤー夫人が出産のため里帰りの途中、ルンビニーの花園で休息をとりました。
その時、急に産気づいて太子(釈尊)を出産されたと伝えられています。
お釈迦様の伝説をどう受け止めるか?
お釈迦様の伝え聞くお話を聞くと作り話のようなものが数多くあります。
お釈迦様のお話は伝説ですので、実際にそうだったという歴史的事実ではありません。ですが、単なる作り話でもないのです。
お釈迦様の伝説をウソだと聞くのではなくて、これらの伝説がどういった意味を持っているのか?ということを考えながら聞くことが大切です。
このことはお経にも言えることで、壮大な話と自分とのかかわりを考えながら聞くことで、何を言いたいか?ということが分かってきます。
お釈迦様が生まれた時の伝説
お釈迦様の生まれた時の数々の伝説を見てみましょう。
白い像が胎内に
マーヤー夫人は、白い象が胎内に入った夢を見た後、釈尊を懐妊した(兜率天という天上の領域から白象の形をとって降りてきた)という伝説があります。
これは釈尊の偉大さを表そうとしたものです。
でも、どうして象だったの?
おそらくインドの人にとって象が大切な動物だったからではないでしょうか?
右脇から誕生
ルンビニーの花園で、マーヤー夫人が無憂華(むゆうげ)の枝を手にしようとした時、釈尊は右脇から誕生したという伝説があります。
ヒンドゥー教のマヌ法典によれば…
- 梵天の口から司祭者(バラモン)
- 腕から王族(クシャトリア)
- 腿(もも)から庶民(ヴァイシャ)
- 足から奴隷(シュードラ)
…が、それぞれ生まれたとされています。
釈尊は王族ですから、腕(脇)から生まれたと伝えられているのです。
また、なぜ右かというと、インドの習俗としては右は清らかで左は汚れている、という考え方があるからです。
しかし、釈尊は、このような身分制度(カースト制度)を否定されていることを忘れてはならないでしょう。
誕生時に天上天下唯我独尊と宣言
お釈迦様のお話で一番有名なのがこちら。
誕生するとすぐに7歩あるいて、右手で天を指し、左手で地を指して、「天上天下唯我独尊」(てんじょうてんげゆいがどくそん・天にも地にも我独り尊し)と宣言されました。
この意味を考えてみましょう。
七歩あるいたということは、迷いの世界である六道(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上)を超えたということです。
誕生と同時に迷いを超えてさとりを開いたわけではありませんが、後にさとりを開いて仏陀になったということを、誕生のところに引き寄せて表現されたわけです。
補足:天上天下 唯我独尊…について
天上天下 唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん・天にも地にも我独り尊し)とは
よく勘違いされる言葉ですが決して「他人と比べて、この世の中で自分が一番尊い」という傲慢な意味ではありません。
「私のいのちは、天にも地にも、この世にたった一つしかない、かげがえのないいのちである」という意味で、
それは私のいのちだけに言えることではなく「すべてのいのちは、かけがえのない尊いものである」ということになります。
さらにあまり知られていませんが、天上天下 唯我独尊の後に次のように続きます。
三界皆苦 我当安之(さんがいかいく がとうあんし)
三界は皆苦なり 我まさにこれを安んずべし
現代語訳:すべての世界は苦しみで満ちている だからこそ私は人々に真実を知らせ、安らかな境地に到達させるのである
▼お釈迦様が生まれた時に宣言された言葉はまとめると次のようになります。
天上天下 唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん・天にも地にも我独り尊し)
三界皆苦 我当安之(さんがいかいく がとうあんし・三界は皆苦なり 我まさにこれを安んずべし)
現代語訳:私のいのちは、天にも地にも、この世にたった一つしかない、かげがえのないいのちである(すべてのいのちは、かけがえのない尊いものである)
すべての世界は苦しみで満ちている。だからこそ私は人々に真実を知らせ、安らかな境地に到達させるのである。
仏陀とは、自らが真実に目覚めた者というだけでなく、他を真実に目覚めさせるものなのです。
天は感動し、甘露の雨を降らせた
お釈迦様が誕生した際に「天は感動し、甘露の雨を降らせた」という伝説があります。
これは釈尊の誕生を、人間だけでなく、動物や植物も含め、大自然・大宇宙が喜んだということを表しています。
花まつりにお釈迦様の誕生仏に甘茶を灌いでお祝いするのは、この伝説によるものです。
ちなみに、花まつりの別名が「灌仏会」(かんぶつえ)というのはここからきています。
漢字の「灌」は灌ぐ(そそぐ)・流しかけるという意味です。
アシタ仙人の予言
スッドーダナ王は、インドの慣習に従って、アシタ仙人に生まれたばかりの王子の人相を占わせました。
アシタ仙人は王子を抱きかかえると、急に涙を流しました。
周囲の人は驚いて「何か良からぬことがあるのでしょうか。」と尋ねたところ、アシタ仙人は次のように答えました。
「私は王子の将来に不安があるから泣いたのではない。この王子は、家にあれば全世界を武器を用いず徳によって征服する偉大な王(転輪聖王・てんりんじょうおう)になるであろうし、
また、出家すれば精神界の王として人類を救済する仏陀となるであろう。
いずれにしても、すでに年老いた私はこの方の成人された姿を見ることができない。
そう思うとうち悲しくなって、涙がこぼれたのである。」と。
このアシタ仙人の予言は、当時のインドの歴史的事情を反映していたようです。
当時のインドでは、多くの国が乱立し、争い合い、精神界でもさまざまな思想が入り乱れていました。そんな中で、それぞれの混乱を治めてくれる偉大なる国王や仏陀の出現が願われていたのです。
お釈迦様の名前に関して いろいろな尊称
これまでお釈迦様とお呼びしてきましたが、実はお釈迦様の本名はゴータマ・シッダッタといいます。(パーリ語の発音・サンスクリット語の発音ではガウタマ・シッダールタ)
お釈迦様とは敬う気持ちを表す尊称になります。
名前の意味
お釈迦様の本名は姓をゴータマ(瞿曇・くどん)、名をシッダッタ(悉達多・しっだった)といい、その名前の意味は
ゴータマとは「最良の牛」、シッダッタとは「目的を達成した者」となります。
尊称に関して
お釈迦様とお呼びしますが、実はこの呼び名は本来はお釈迦様(ゴータマ・シッダッタ)を指すものではなく、釈迦族全体のことを指すものです。
しかし、今日ではお釈迦様と言えばゴータマ・シッダッタを指す言葉になっています。
ちなみに釈迦族の釈迦はサーキャ(シャーキャ)を音写したものです。
その他のお釈迦様の尊称としては釈迦族のゴータマ・シッダッタがさとりを開き(真実に目覚め)仏陀と成られたので「釈迦牟尼」と呼ばれるようになりました。
釈迦とは釈迦族出身、牟尼とは聖者という意味です。
また世にも尊いという意味で、「世尊」とも、釈迦牟尼世尊を省略して、「釈尊」と呼んでいます。
尊称をまとめると次のようになります。
- お釈迦様
- 釈迦牟尼
- 世尊
- 釈迦牟尼世尊
- 釈尊
かなりたくさんの尊称があるんですね!
お釈迦様のいろいろな呼び名
尊称以外にも言語によって多少発音が違ってきます。
- パーリ語の発音ではゴータマ・シダッタ
- サンスクリット語の発音ではガウタマ・シッダールタ
- 漢訳では瞿曇悉達多(くどんしっだった)
また現在仏さまとしてのお釈迦様(ゴータマ・シッダッタ)は次のように呼ばれています。
- 釈迦牟尼仏
- 釈迦牟尼如来
- 釈迦牟尼世尊
またそれらを省略して、釈尊、釈迦尊、仏様、お釈迦様と呼ばれます。
このあたりはお経や法話によく出てくる言葉になります。
もし、法話を聞く機会があれば言葉にも注目してみてください。
お釈迦様とはどんな人? 誕生編 まとめ
今回はお釈迦様ってどんな人?誕生編をお送りしました。
お釈迦様のお話には伝説が多いですが、事実かどうかではなく、その伝説にどういう意味があるのか?ということを考えながら聞くことが大切です。
今後つづけてお釈迦様の生涯のお話をできればと思います。
それでは、また。
参考文献:『高校生からの仏教入門 釈尊から親鸞聖人へ』小池秀章 本願寺出版社
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