12月と言えば、日本全国クリスマスムード一色になっている昨今。
そんな中、お寺ってクリスマスはどうしてるの?
という方もいらっしゃることでしょう。
そこで、今回は僧侶である私がクリスマスに直面した日本のお寺の実情をお伝えしたいと思います。
気楽にお読みください!
クリスマスについてお寺では子どもにどう伝えているか?
12月になるとテレビもラジオも雑誌も街もお店もクリスマス一色に染まります。
山下達郎やマライアキャリー、Wham!らのクリスマスソングが流れ、街はきらびやかなイルミネーションで飾られます。
私はお坊さんですが、その様子を見て素直にとても雰囲気が良くて素敵だなぁと思います。
クリスマスの波はわが子を通わせている保育園にも来ていて、この頃になると「クリスマス会」なるものがあります。
クリスマス会は実質子どもの発表会という位置づけで日々練習してきた歌や楽器演奏、ダンスなどを披露します。
その中にクリスマスっぽい歌や演出があり最後にはサンタさんが登場し、プレゼントを園児たちに配ってくれるので、クリスマス会というわけです。
こういうことが子どもたちの日常の中にあるので、子どもたちにとってクリスマスはなんだか楽しいイベントの日と自然と認識されているようです。
そういうことがあるので、お寺でも子どもが小さいウチは「プレゼントが欲しい」「サンタさんはどこからやってくるの?」という会話が交わされます。
正直、この子どもの素直な思いに対して返答にちょっと困ります。
なぜかというと、ウチはお寺だけど親でもあるからです。
子どもが喜ぶことをしてあげたいと思うけれど、ウチは仏教徒でお寺だし。
普段周りの方々に言っていることとやっていることが違ったらおかしいよなぁとか、考えてしまいます。
また「なになにちゃんはプリキュアのもらえるって言いよったよ。」とか聞くと申し訳なくて心がキュッとすることもあります。
それでも、子どもには断腸の思いで「お寺だからサンタさんこないのよ」とこう言うようにしています。
なぜお寺にサンタさんは来ないのか?
本来的にはお寺ではクリスマスを祝うことはありません。
クリスマスというのはキリスト様の誕生日をお祝いする行事ですから、他宗教の行事は仏教徒である私たちには本来関係がないものです。
それにお寺は仏教を伝える場所ですし、お釈迦様の教えをよりどころとして歩んでいくものの輪を広げていく要となる場所と言えます。
その範たる僧侶がクリスマスだからと言ってパーティーだの、プレゼントだの、恋人と過ごすだの浮かれていていいはずがありません。
…と、まあ…
お寺には通常こういう建前があるわけですよ。
え?本音はどうかって?
そりゃあまあ、楽しいことは好きですし、プレゼント交換なんてめっちゃ面白そうですし。
子どもたちの枕元に置いて喜ぶ顔を見たいですし。
もうクリスマス大好き…ごにょごにょ…。
サンタさんが来ないと聞いた子どもたちの反応
少し取り乱しましたが、実際の話。
子どもに「お寺にはサンタさんが来ないのよ」と言っても子どもが納得できる説明をするのが難しいです。
子「どうしてウチにはサンタさん来ないの?」
私「お寺には煙突がないからね」
子「○○ちゃんのところは煙突なくてもサンタさん来よるよ。」
と言われますし、
私「クリスマスはキリスト教のお祝いだから、仏教は花まつりでお祝いしようね」
子「花まつりでプレゼントもらったことないよ。」
と返されます。
なかなか悩ましい『クリスマス問答』ですがおそらく全国のお寺でこういったことが繰り広げられていることでしょう。
とはいえ、ギャーギャー言ってたウチの子が実際にクリスマスが過ぎてみればどうか?というと…
どうってことないです。
プレゼントのことなんか忘れてけろっとしています。
今までの気苦労はいったい何だったの?というレベルです。
まあ、子どもってそんなものかもしれませんね。
よそのお寺さんの事例
今年聞いて面白かったのがお寺さんでもクリスマスにプレゼントをあげるという話です。
しかもよく知っているクリスマスのサンタさんではなく、阿弥陀様がくれるのだそう。
あらかじめ本堂の大鏧(だいきん)の中にプレゼントを入れておいて、息子や娘に本堂にお参りに行ってきなさいという。
そこで、本堂にお参りに行ったら大鏧(だいきん)の中にプレゼントが入っていて驚くのだそうだ。
クリスマスの靴下の中のプレゼントが浄土真宗的にローカライズされていて、これはこれでアリだなと思いました。
そもそも本来のクリスマスってどんなの?
ちょと調べてみて驚いたのですが、実はクリスマスって「イエス・キリストの誕生日」というわけではないらしいのです。
イエス様の誕生をお祝いする日であるのは間違いないんだけれど、誕生日ではないというのです。
その理由は聖書にイエス・キリストの誕生日が書かれていないからだそう。
てっきり誕生日とばかり思っていたので驚きました。
それは、さておき。
商業化してしまった感のある日本のクリスマスだけど、
本来のクリスマスの過ごし方って知っていますか?
日本では恋人や友人と出かけたり、パーティーをする日とされているけれど、
そんなことをせずに、家族で家で過ごすのが定番なのだそうです。
参考:そうだったのか!サンタさんに聞く、クリスマスの正しい過ごし方
家族で家で過ごすということを聞くと本来のクリスマスって、日本のお正月とか、法事とかに近いんじゃないかなと思いました。
クリスマスもいいけど、花まつりもね!
12月25日のクリスマスもいいけれど、4月8日はお釈迦様の誕生日。
仏教徒ならやはり花まつりを祝いたいものです。
ただ、クリスマスと比べると花まつりの認知度は低く、ネットで調べても『○○ガーデンの花まつり』というリアルな「花」イベントがヒットしてしまいます。
仏教に親しんでもらう意味合いでも、もう少し花まつりが認知されお祝いムードが広まるといいなと思う。
クリスマスのように派手になりすぎると本来の意味合いが変わってしまいそうですが、花まつりが本来のクリスマスのように家族で過ごすような雰囲気になると面白い。
例えば、花まつりの日は家族で集まってお仏壇に手を合わせ、お参りが終わったら仕出しでも取ってわいわいと過ごす。
赤ら顔のお父さんがいつもより多くしゃべり、お母さんもおいしい料理に舌鼓。
子どもは普段とは違う雰囲気に大はしゃぎ。
ああ、なんといい花まつりの過ごし方だろう。
というか、これはもう法事だね。
本来的な花まつりはお釈迦様のお誕生をお祝いし、仏様の教えに出会うことができたことを喜ぶ日だから、つまり法事と言ってもおかしくない。
今はそんな過ごし方をしている家庭はないだろうけど、ゆくゆくそんな花まつりが広まっていけばいいなと思った12月でした。
おしまい。
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